FX界隈ではいわゆるスワップ派、と言われるスワップ金利目的での通貨保有する投資家がいる。純粋な通貨変動による売買差益での利益ではなく、通貨間金利差から日々プラスの金利を享受する手法とでも言おうか。
南アフリカランやトルコ等、いわゆる新興国通貨は高金利通貨として有名だが、そういった高金利通貨を買うことで、日々プラススワップ収益を得ることができる。ただ、そんな簡単に儲かるわけがないということは賢明な方々ならお気づきのことだろう。
タイトル通りだが「高金利通貨は安くなる」。この意味がわかるだろうか。
高金利通貨が安くなる理由:金利平衡説
短絡的に考えれば、金利が上がればその通貨を買うと金利が貰えるためその通貨はたくさん買われる。たくさん買われれば、その通貨の価値は高くなる、つまり高金利通貨は高くなるだろうと考えられる。利息がたくさん貰えるのだから、みんなその通貨が買いたくなるのは当然だ。
では、仮に「高金利通貨は高くなる」と仮定しよう。
為替の取引は、買う人がいれば売る人がいる、つまり必ず相手がいる取引だ。ここで高金利通貨をA、低金利通貨(Aと相対的に比較して)をBとする。Aを持っている人は、Aを売ってBを買うのだろうか。そもそもA高金利通貨が高くなるなら、Aを持ち続けて高くなるのを待った方が良いはずだ。利息だってたくさん貰い続けられるだろう。もし低金利通貨Bに両替した場合、利息は減るしBは安くなる(相対的に)し、と往復ビンタなわけだ。だとしたら、そもそも取引が成り立たない。
しかし、日々為替市場では高金利通貨と低金利通貨の取引が無数に行われている。なぜなのか??相手もバカではない。合理的な人間である。つまり、取引相手は両替しても儲かる見込みがあると考えているわけだ。
となると、利息が減る分よりも為替差益で儲けられる、つまりBが安くなると考えるからAと両替するということ。これが金利平衡説といわれるもの。つまり、「高金利通貨は長期的には安くなる」のだ。(でないと取引が成り立たない)
アダムスミスの「神の見えざる手」のようなものか。ちなみに国富論は名著中の名著なので是非一読をお勧めする。
もちろん現実はそんな簡単ではない
金利平衡説が本当に成立するなら、通貨を交換しても長期的には等しくなる(為替差益・差損と金利差収益が等しくなる)ことになるので、そもそも交換する意味がなくなってしまう。さらに注意したいのは”長期的には”の部分だ。
まず、市場は必ずしも合理的に動くものでもない。市場には長期保有の参加者だけでなく、短期での利益を求める人もいる。短期的には利上げのあった通貨は買われることも多いので、短期的に高くなったりする。また、ヘッジファンドなどは重要な指標のタイミングで強烈な買いや売りを浴びせることで為替動向をある種操作し利益を上げることもある。他にも、輸出入業者はビジネスのために、各国の通貨を買う必要があるので、必ずしも為替取引のみで利益を出そうとしてない。
まとめ
結論からすると、結局どのように投資していくのが正解というのは分からないわけなのだが、この「高金利通貨は安くなる」という視点は為替の投資をする上で、頭に入れておいたほうが良いだろう。投資に限った話ではないが、何事も一方的な見方にならないようにすることは重要だ。
ちなみに上述の内容は以下書籍が参考になる。他にも様々な指摘が盛り込まれているので、興味のある方はどうぞ。