起業家やフリーランスの方、等で活躍されている方が増え、サラリーマン以外の選択肢が一層身近なものになってきている。それ自体は多様な働き方を選択できるようになった、ということであり素晴らしいことだ。
ただ、自戒も込めて少し気を付けたいのが、近視眼的になってはいないだろうか?ということ。というのも、僕の周囲の人間から聞こえてくる、意見は以下のようなもの。
独立や起業すれば
- ダメ上司から変な指示受けないの最高
- 働く場所も時間も自分で決められる
- 窓際社員(大して働いてないのに給与が出る)のために稼ぐ必要がない
- 休みも自由に取れる
分かる。言いたいことはすごく分かる。僕自身、サラリーマンであり似たようなフラストレーションを感じるときは勿論ある。そして、フリーランスの方と話すときに、その自由さに憧れる時もある。
ただ、どんなポジションにもプロ・コンはある。短絡的に自由を求め起業やフリーへ走る前に、サラリーマンの良さも改めて知っておくべきだ。
隣の芝は青く見えるものだから。
気付かないところで厚遇されているサラリーマン
中には普段気付きづらいものもあるだろうが、実はサラリーマンはかなり優遇されている。
※ちなみに、以下サラリーマンの環境は僕が実際に働いたことのある、いわゆる大手企業での環境です。中堅企業以下の場合は状況も違うと思うので、あくまで大手企業サラリーマンの環境であること、ご留意ください。
1.安定した給与
極端な話、毎月会社に行っていれば安定して給与が貰える。(だからこそ、窓際社員にも給与が払われ、それがフラストレーションにも繋がるわけだが)
それこそ、不労所得と言っても良いくらいだ。だって極端な話、働かなくても会社に行ってさえいれば、給与が貰えるんだから。
当然、独立したら売上が上がらないと給与なんて出ない。逆に言えば稼げば稼いだ分、自分の給与になる。サラリーマンではいくら頑張って稼いでも、大して給与は変わらない。
業態にもよるだろうが、独立して稼いでいる人、50歳になっても同じだけ稼げるのだろうか。若い頃はパワーで乗り切れると思うが年取ると結構きつくなるよ。
50歳、60歳になっても今と変わらずバリバリ働ける or それまでに一気に稼ぎ切る、という方は良いけども。
2.法定福利厚生
法定福利は、企業が支払うことを法律で定められているもの。すべての企業が対応しなければいけないもので以下が6種が該当する。
- 健康保険(企業が半額負担)
- 介護保険(企業が半額負担)/40歳以上の従業員に課せられる保険料
- 厚生年金保険(企業が半額負担)
- こども・子育て拠出金(企業が全額負担)
- 雇用保険(企業が3分の2程度を負担。)
- 労災保険(企業が全額負担)
各々の詳細な説明は割愛するが、ざっくり年収の15%分くらいを企業が負担してくれていると考えると良いだろう。年収1,000万円の方なら、150万円を会社が負担してくれていると考えよう。
独立すると、仮に年収が同程度としても、ざっくり150万円程の負担が自身(もしくは自分の会社)にかかってくる、ということを理解しておくべき。
普段はあまり意識しておらず気付かないところではあるが、見えないところで会社は結構サポートしてくれてるんです。
3.その他法定外の福利厚生
その他法定外の福利厚生は、企業によって変わってくるが一般的なものとしては以下が挙げられる。
- 通勤/交通費:年間十数万円
- 家賃補助 :年間100万円以上
交通費は定期代や日々の移動の電車費を合わせると月1万円は超すだろう。年間で12万円以上だ。独身なら旅行に行けちゃう金額ですね。
また、家賃補助に関しては月額10万円程度を補助する企業は結構ある(特に転勤がある企業はほぼ間違いなく補助が出る)。そうなると、年間100万単位で可処分所得が違ってくる。家賃補助がなくとも借上社宅や寮なども。
フリーや独立されたら、当たり前だけど基本これら費用はすべて自前で負担することになる。あと地味だけど、サラリーマンなら携帯やPCも普通会社から支給されるけど、これらもフリーランスや自営の場合は自身で負担する必要あり。
他にも大手企業だと、以下のような手厚い福利厚生がある。
- 企業年金 :2,000万~3,000万円
- 退職金 :2,000万円~3,000万円
- 死亡弔慰金:2,000~3,000万円(業務上の死亡の場合)
企業年金は、公的年金とは別に企業が福利厚生として設けられており、大手企業卒だと、公的年金とは別に毎月10数万円はプラスしてが貰える形。総額で2,000万~3,000万円くらいの価値はあるだろう。
併せて、退職金制度。これも大手企業の場合、大体2,000万~3,000万円が定年退職時に支払われる。企業年金と合わせると5,000万円程のインパクト。
また、死亡弔慰金というものがある。業務上で死亡した際に遺族に数千万円支払われる(業務外でも数百万は支払われるケースも)。ご家族がいる方にとっては、非常に心強い。万が一死亡してしまった際も、大企業ではしっかりと金銭的にサポートされるよう制度が整っている。
単純な所得(独立後の収益)ベースでサラリーマンと比較するのではなく、上記のような福利厚生部分も加味した比較をすべきだ。
サラリーマンの芝はかなり青い
上記はサラリーマンの青い芝の一部だが、上記を鑑みるだけでも僕の感覚では、サラリーマンの場合の生涯年収よりも少なくとも”1億円以上確実に稼げる”見込みが無いと、金銭的には割に合わない。
それぐらい、実はサラリーマンという芝生は青いんです。
もちろん、お金じゃない。何より自由を得たいという方もいるだろうし、それを否定するつもりもない。
ただ、紹介したようなサラリーマンだからこそ享受できる様々なメリットをしっかりと認識した上で/比較検証した上で、独立するのか否か自身の道を決めて欲しいと思う。